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立命館高校実践事例

LESSON1実践 ほんとうに、人生は選択の連続だった!

基本情報:

1.レッスン名「LESSON1 人生は選択の連続だ!『何を得るか』より『何を失うか』を考える生き方」

レッスンのねらい

毎日の何気ない生活・行動の中で、みなさんは多くの意思決定を無意識のうちに行っています。しかし、その意思決定を改めて考えてみると、本当は別の選択をしていたほうが良かった場合もあるはずです。これを言い換えると、より良い選択肢が犠牲にされ、誤った選択肢が優先されてしまったと言えるでしょう。本レッスンでは、この犠牲にした選択肢を意識的に見直して、ベストな意思決定のあり方を学びます。
生徒がおこなうディスカッションは、希少性のなかでの選択という行為を条件設定してより具体的なイメージを持たせながら進められます。「受験勉強・コンサート・デート」という3つの選択肢が重なり、しかしどれか一つしか選べないという状況のなかでどうするかということを考えながら、失った価値としてのオポチュニティコストについて意識することや、選択するに至ったプロセスを共有することで多様な考え方を知ること、また、合理的な意思決定をするためにそれぞれの選択肢のメリット・デメリットを比較考量する必要性などを身をもって知ることができます。

2.2010/02, 2011/04, 2011/07 政治経済(2単位)の授業枠。高校1年生。クラス人数は約40名(男女比は6:4)、約30名(男女比は9:1のクラスと1:9のクラス)等の計5回実施。時間は50分。

3.授業の流れ・内容のハイライト・生徒の反応

導入

社会に出れば物事には解があって、そこから逆算して最短ルートを探すなんてことはありえない話だよね。だって、解がないんだから。人生に最適解はないんだよ。そうであれば、社会に生きる私たちがいまこうして勉強していることとはいったい何なのか?みんなには、解のない問題に出くわしたときにどうすればいいのかという「思考の構え」のようなものを提示できればと思い、それについて一緒に考えていきたいと思います。

「人生は選択の連続だ!」という話しから、「今までの人生で思い出に残っている『選択』を教えてください」と問うて何人かに聞く。学校やクラス選択の話が多く出された。

問題提示

それを受けて、「今から次のような状況になったとしてあなたならどれを選択しますか?」と投げ掛けて、3つの選択をリアルに説明する。また、念願の希望大学推薦試験のための受験勉強のこと、コンサートをすきなアーティストのファイナルコンサート(あるいは大好きなメジャーリーグのプレミアチケット等)のこと、あこがれの人をまさに自分には高嶺のはなだと思っていた人からの誘いであるとのこと、いずれも「プレミアム感」たっぷりのものだということで、できるだけ自分に身近な状況として考えてみてください、と告げる。

個人作業

アクティビティシート1を配って個人作業に入る。指示では3~4分と書いてあるが、10分程度はかかる。当初は周りと相談しながらする生徒も見受けられたが、「互いのトークタイムはあとで取るから、今は個人作業でまずやってみてください」と告げて、作業に集中させる。

意見を聞く

結果集計を板書する。それぞれの理由を述べてもらい、板書していく。 生徒とのやりとりの往復もあるのでこれに10分ほどの時間が結構かかった。
理由を述べてもらうなかで、それぞれのメリット・デメリットを混ぜ込んでの発表になる。
「へえ、そう考えるのかあ。いろんな考え方があるねえ。聞いていると面白いし考えさせられるよねえ。みんなの価値観や人生観が垣間見えるよねえ」。生徒とのやりとりのなかで、随時この授業のテーマにかかわる事項をコメントとして加えた。

意見をさらに聞く(1)

「出された意見以外で『こんな考え方もあるよ』というのがあれば教えてください」
「コンサートに行くと風邪をうつされる」「デートして性格の悪い女の子だったら落ち込んで勉強をする気がなくなる」など、興味深い意見が多く出された。
「みんなの意見を聞いていて、先ほど選んだ第一希望を変えた人はいますか?再度確認します」として挙手を求める場面もつくった。変化がある場合とない場合があり、それぞれに「なぜ変えたのか(変えなかったのか)?」と聞いてみる。

教員からの話

これまで無意識的に選択していたものを意識的に選択するようになること、捨て去られた多くのメリットが犠牲になったということ、の話しをする。

意見をさらに聞く(2)

「さあ、それでは3つの選択肢以外の選択はないだろうか?奇想天外なものも含めてあれば言ってください」

出てきた意見(例)

3つ全てを満たすパターン

  • 「デートでコンサート(でもチケットは一つ)~移動時間を短縮(快速電車乗り継ぎ)~帰宅、勉強」
  • 「午前デート、午後コンサート、徹夜で勉強」
  • 「前日までに勉強して、昼にデートして、夜コンサート」(勉強は直前にやってもそれまでの成果が試されるものだと思うから)

2つを満たすパターン

  • 「憧れの人に勉強を教えてもらう勉強デート」

意見をさらに聞く(3)

上記を踏まえ「選択肢が増えました。上記に選択を変更する人は?」と問うて聞くと変更する生徒が増えてくる。 「なぜ変えたのか?」と聞いてみる。

~ここまでで45分程度~

最後のまとめとして教員からの話

どれが正しくて間違っているかは一概には言えない、ということ。
他者の意見を聞いて選択肢が広がったという実感がもてたのではないか、ということ。
私たちの日々の選択では、安易に結論を出さずに、あるいは周囲に流されて選択するのではなく、あらゆる可能性を考えてみて選択してほしい、ということ。
選択するときには犠牲になったオポチュニティコストというものがあり、それについて意識的であることで考えや行動の幅が広がっていくものだ、ということ。 など

「PACED意思決定プロセス」は、時間的な余裕がなく触れられなかった。時間を改めて実施した方が効果的かもしれない。

4.実施してみての総括

  • 教員の言いたいこと・伝えたいことを最後にまとめて話すという手法よりも、生徒とのやりとりの合間に挿入していくほうが効果的であり、かつ「道徳のお話」に陥る懸念を払拭できると思う。
  • 用語としての「稀少性」「オポチュニティコスト」などを殊更に強調しすぎないように注意した。
  • 選択状況の紹介の時・選択を考えている時・理由を発表してもらっている時、それぞれに生徒の目の色は変わり、真剣に自分のこととして考えていることがよく分かった。気持ちが入るということもあってか、生徒の声は大きくなりがちで、クラスメイトとコミュニケーションを取りたいという欲求が沸き上がるという変化もあった。生徒は「難しいなあ」という言葉を連発したり、苦悩して考えている場面が多く見られた。自分を揺さぶられているという感覚をもったのではないかと思う。
  • 何のために勉強するのか、いま自分自身がしていることは何なのか、今後の自分の人生における選択を考えることは、今の自分の行為に繋がるということを多少なりとも意識してもらえたのではないかと思う。

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LESSON6実践 ほんとうに欲しいんだ!

基本情報:

1.レッスン名「LESSON6 この海の魚は私のもの!? 私的所有権が経済活動にもたらすもの」

2.2009/08, 09 政治経済(2単位)の授業枠。高校1年生。クラス人数は約40名(男女比は6:4)。計3回実施。時間は50分。

3.授業の流れ・内容のハイライト・生徒の反応

導入

「釣りに興味ある人いる?釣りはおもしろいなあ!」という個人的な話から、「じゃあ、いまから釣りをいぶかしながらだったのは良かった。

アクティビティ

  • クラスを8つの班に分けて移動して座らせ、教室中央を空けるよう指示。その場所に机を合わせ、その上に模造紙を広げて置き「ここが釣りをする漁場です」と告知。
  • 「釣りに自信がある人で、われこそはと思う人を各班1名出してください。自薦他薦は問いません」と告知。漁場の周囲に集まらせる。
  • 代表者は結果的に全員男子であった。その後の動きを見ていると、男子多数に女子が交るというのは少々やりにくいかも(魚をめぐっての争いのため)。
    →別のクラスでは女子が交ることになったが、大きな問題はなかった。
  • 報酬については、「班の代表者は班に帰ってからそれを分配してください。その分配方法は各班で相談して最後に決めてください」と指示。
  • 報酬として飴(ラムネ)を用意した。報酬の話しをすると生徒が沸き立つ姿が見られた。なので「本来授業では、何か具体的なモノをあげることはしないわけですが、今回は特別に授与します」と告知。
  • 第1ラウンド終了後黒板に各班代表者が釣った数を板書し、第2ラウンド終了時にも同じように書いた。一覧にすることで変化が視覚的に理解でき、効果的だった。特に「インセンティブ」についての説明では数字の上昇が分かりやすくなり、効果的だった。
  • 第1ラウンドの1回目の漁は奪い合いが激しく、模造紙と魚が破損する可能性がある。2回目は魚がなくなり30秒間ではすることがないので、ない場合は30秒を待たずに漁を終了させた。
  • 第2ラウンド最初の区画割りは、模造紙にボールペンで境界線を記入した。
  • 第2ラウンド1回目は誰も獲らなかった。区画上に置いた魚が移動する、あるいは生徒によって移動させられることもあるので、2回目の前に再度線上に置き直した。が、2回目の漁では線上にある魚自体が紙製なので、風圧で簡単に飛ばされたり、腕に当たったりして移動してしまった。(→のちの問いかけで、その点も含めて説明をすることで解決)
  • 線上の魚についての質問関連
    線上のものは誰のものかはっきりしなかったので、例えば、半分は自分の漁場に入っているので自分のものだと考えたり、それが誰のかと悩んでいるうちに他の人に獲られてしまうと心配して先に獲ろうと思った、という生徒が多かった。
    結果、「区画上の魚をとった生徒には渡さない」と指示があったが、渡す場合もあってよいかと思う。
    その後、渡さない場合でもやってみたが、結論としては、区画上の魚とは何か、それをどう考えるのかということのまとめがしっかりできていればどちらの場合でもいいのではないか。要はその後のまとめ方次第である。
  • それ以外の問いについては、おおむねこちらが予想していた答えが返ってきた。
  • このレッスンでは、教員からのまとめが大変重要になる。まとめがなければおそらく何をやっているのかよくわからず、ただ楽しいと思って終わりになるだろう。また、どのようなまとめをするのかということについても非常に重要なファクターであることを再認識した。
  • 生徒の感想が様々なことを教えてくれた。

4.実施してみての総括

  • 紹介した語句(板書した項目含む)は以下の通りである。
    私的所有権、経済の仕組み、政府部門の役割(立法行政司法、条例)、政府のマイナスのイメージ(税金取られる、不正をする等)とプラスのイメージ(利害調整役の重要性)、資本主義社会、私有財産制、共産主義社会、ルソー(人間の不平等)、人間の欲、インセンティブ、富の最大化等
  • 時間的には余裕があった。約40分で終了。最後の10分は感想文記入等に使った。
  • 漁があれほどパワフルで「人間の欲」を駆り立てるものであることに、見ている生徒たちも驚きをもっていた。
  • 感想からは、こちらの予想を上回る好印象の回答が圧倒的で驚いた。
  • 我々が生きている資本主義社会とそうでない社会としての共産(社会)主義社会という分類をした。私的所有権が確定している社会:資本主義社会、私的所有権が(確定してい)ない社会:共産主義社会
  • インセンティブについての説明をもう少し加えたらよかった部分もあったが、1回完結であることからそれは控えた。ただし、次回授業もある状況であればここからインセンティブについて結びつけて、インセンティブについてのレッスンにつなげるという方法もある。
  • まとめプリント的なものがあってもいいかなと思った。
  • 実施してみて改めて思ったことは、この教材のもつ潜在的なパワーであった。今回は投げ込み的に試行したので1回完結というかたちになっているが、これを授業の単元に系統立てて織り込むことをすれば魅力的なカリキュラムになるのではないかと思った。

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LESSON8実践 からだでつながりを体感する!

基本情報:

1.レッスン名「LESSON8景気変動、打つべき手は?財政政策と私たちの生活」

レッスンのねらい

政府はどのような景気対策を行っているのでしょうか?それはどのような考え方に基づいているのでしょうか?「減税」は何の目的で行われるのでしょうか?また「財政支出の削減」は何の目的で行われるのでしょうか?そしてそれらの政策が経済全体に与える影響はどのようなものなのでしょうか? 生徒のみなさんは俳優です。総理大臣、主婦、電気店店員、コンピュータショップ経営者、建築作業員などの役を演じます。本レッスンでは、アクションとして劇を実演することを通して、経済社会の中では人と人とがつながっていること、政府の財政政策と、それが私たちの生活に及ぼす影響について学びます。

2.2009/11, 2011/07 政治経済(2単位)の授業枠。高校1年生。クラス人数は約40名(男女比は6:4)約30名(男女比は1:9)で計4回実施。時間は50分。

3.授業の流れ・内容のハイライト・生徒の反応

導入

私たちは日常生活の様々な場面場面で生徒として、先輩として、兄(姉)として、弟(妹)としてなどそれぞれの役割を担っていますよね。いわば、場面毎に役割を「演じている」とも言えますね。その点で「人生において私たちは役者である」とも考えられますよね。ということで、「これから劇をやってみましょう」。

アクティビティ

各グループに第1幕、2幕のシナリオを配布し、「これをもとにその主旨は変更しない範囲でのオリジナリティ溢れる創作劇をみんなで考えてください」と指示した。台本の読み合わせなど、生徒は張り切ってみんなで相談しながら検討する場面が多かった。
劇中は舞台(教室前)に集中するように指示。演者は必ず最初に自分の肩書きを名乗ってから(あるいはそれがわかるように)話すように指示。劇でも真剣に演じる姿が見られた。

4.実施してみての総括

  • はじめのクラスでは2グループ×2で劇をさせ、残りの生徒は審査員をさせることで全員に仕事を与えるかたちを取った。ただし、これをすることで1時間で完結できなくなってしまった。
    →1レッスン1時間完結を考えると、教員からの話しをするための時間確保の点からも、やはり劇は2グループ×1でいいのではと考える。次のクラスでは、その教訓を生かして、2グループ×1で実施。ただ、そのために18人以外の生徒が時間を持て余すことになってしまった。
    →対策として「各グループに指導を入れてもらってもかまいません」と指示した(第1幕、2幕ともに役割が当たっていない生徒には配布した)。生徒は動き回って見学やアドバイスをしていたが、グループのメンバーはそれどころではないという感じであった。なので、やはり時間を持て余すことになってしまう生徒に対する策が必要である。
  • 劇の終了後、ビジュアルシート1と2を全員に配布して解説をした。
  • 「劇からわかったこと」を補足しながら、各項目についての説明した。また、まとめの説明として、経済は人と人とのつながりであるということ、ポリシーミックスのこと、両政策には効果が現れるまでのタイムラグがあるということなどを解説した。また、「拡張的財政政策が善、緊縮的財政政策が悪という構図ではない」の箇所は誤解のないように説明する必要があることを感じた。状況に応じて、時事的な問題と絡めながら説明をした。
  • 教員からのまとめでは、経済は人と人とのつながりであるということが、ひいては経済活動だけに限定されたことではないということを理解できるように配慮した。

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